有期雇用契約とは?期間や改正労働契約法、変更時の注意点を解説

有期雇用契約

「有期雇用契約とは何だろう」、「契約社員やアルバイトの契約更新、これで正しいのかな?」そんな疑問を抱いたことはありませんか?


有期雇用契約は、期間を区切って雇うシンプルな仕組みのように見えて、実は法律上のルールが非常に多い契約形態です。


この記事では、人事・採用担当者が押さえておくべき有期雇用契約の基本と、トラブルを防ぐための実務ポイントを、最新の法改正情報とともに詳しく解説します。

有期雇用契約とは働く期間があらかじめ定められている雇用契約のこと

有期雇用契約とは、その名の通り、働く期間をあらかじめ定めて結ぶ労働契約のことです。
有期労働契約とも呼ばれ、契約社員やパートタイマー、アルバイトなど、期間の定めがある労働者は有期雇用契約労働者に該当します。

契約期間は「1年間」や「6ヶ月間」など個別の契約によって異なり、期間が満了すると雇用契約は自動的に終了するのが原則です。

2014年に改正された労働契約法により、有期雇用契約に関する新たな法律上のルールが導入されました。
企業はこれらの法律を遵守し、契約の更新や変更、無期転換などに関する注意点を正しく理解した上で、適切な労務管理を行う必要があります。

試用期間と有期雇用契約の違いを解説

有期雇用契約と試用期間は、どちらも一定の期間を設ける点で似ていますが、その法的な性質は全く異なります。
試用期間は、無期雇用契約を前提として、本採用の前に従業員の適性や能力を見極めるために設けられる期間です。

そのため、試用期間が終了しても当然に雇用契約が終了するわけではなく、本採用を拒否する場合は「解雇」に該当します。
一方、有期雇用契約は契約期間の満了をもって雇用関係が終了する「雇止め」が原則となり、両者の違いは明確です。

会社都合で試用期間後の本採用を拒否する解雇には、正社員と同様に客観的で合理的な理由が求められます。
有期雇用契約が実質的に試用期間と判断される例もあり、その場合は期間満了を理由とした雇止めが無効になる可能性もあるため、契約内容や就業規則上のルール設定には注意が必要です。

無期雇用契約と有期雇用契約の違いを項目別に解説

有期雇用契約と無期雇用契約にはいくつかの重要な違いが存在します。
最も根本的な差異は契約期間の定めの有無ですが、それに伴い、従業員からの退職の申し出に関するルールや、会社側からの雇用終了のハードルも異なります。

これらの違いを正しく理解することは、適切な雇用管理を行い、労使間のトラブルを未然に防ぐ上で不可欠です。
ここでは、それぞれの違いを「契約期間の満了」「退職申し出の自由度」「解雇ルールの厳しさ」という3つの項目に分けて具体的に解説します。

契約期間の満了があるかないか

有期雇用契約と無期雇用契約の最も本質的な違いは、契約期間の満了があるかないかという点です。

有期雇用契約は、契約時に定めた期間が満了すると、原則として雇用契約が終了します。
契約を継続するためには、当事者間の合意による更新の手続きが必要です。

これに対して、無期雇用契約には契約期間の定めがなく、従業員が定年に達するか、自ら退職を申し出るか、あるいは解雇されない限り、雇用関係が継続します。
したがって、雇用の安定性という観点では、契約満了による終了の可能性がある有期雇用契約と、その心配がない無期雇用契約との間には大きな隔たりがあります。

従業員からの退職申し出の自由度

従業員側から退職を申し出る際の自由度にも違いがあります。

無期雇用契約の場合、民法上は退職の申し出から2週間が経過すれば雇用契約を終了させることが可能です。
一方、有期雇用契約では、契約期間の遵守が原則となるため、「やむを得ない事由」がない限り、従業員は契約期間の途中で一方的に退職できません。

ただし、例外として、労働基準法により、その契約の期間の初日から1年以上が経過している場合は、いつでも退職することが認められています。
このように、有期雇用契約は無期雇用契約と比較して、従業員側の退職の自由度が一定程度制限されています。

会社側からの解雇ルールの厳しさ

会社側から雇用契約を終了させる際のルールの厳しさも大きく異なります。

無期雇用契約の従業員を解雇するには、労働契約法に基づき、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる厳格な要件を満たさなければなりません。

これに対し、有期雇用契約では、契約期間が満了した際に契約を更新しない「雇止め」という形で雇用を終了させることが可能です。
ただし、契約が反復して更新されている場合など、一定の条件下では雇止めが無効とされる「雇止め法理」が適用されるため、会社が自由に契約を更新しないと判断できるわけではありません。

有期雇用契約の期間について

有期雇用契約における契約期間は、企業が自由に設定できるわけではなく、法律によって上限が定められています。
一般的には6ヶ月や1年といった期間で契約されるケースが多く見られますが、労働契約法では契約期間の最長について明確なルールを設けています。
この上限を超える契約は、原則として無効となります。

ただし、労働者の専門性や年齢といった特定の条件によっては、例外的に上限が延長される場合があります。
企業はこれらの法律上のルールを遵守し、個々の労働契約において適切な期間を設定しなければなりません。

契約期間の上限は原則として3年

労働基準法第14条第1項により、有期雇用契約の期間は、一部の例外を除き、原則として上限が3年と定められています。
したがって、初回の契約で3年を超える期間を設定することはできません。
もし、これに違反して3年を超える契約を結んだ場合、その契約期間は3年に短縮されます。

多くの企業が契約期間を1年や6ヶ月など、3年より短い期間で設定しているのは、業務量の変動に柔軟に対応したり、定期的に従業員の勤務状況を評価したりする目的があるためです。
契約を更新する場合でも、通算の契約期間が法律上の別のルールに抵触しないか注意が求められます。

高度な専門知識を持つ労働者などは上限5年

原則3年の契約期間上限には、いくつかの特例が設けられています。
一つは、高度な専門的知識などを有する労働者との契約で、この場合は上限が5年となります。
これには医師、弁護士、公認会計士、システムアナリストなどが該当します。

もう一つの主要な特例は、満60歳以上の労働者との間で締結される労働契約です。
定年後に再雇用される嘱託社員などがこのケースにあたり、同様に契約期間の上限が5年と定められています。
これらの特例は、専門職のキャリアパスや、高年齢者の雇用機会の確保といった政策的な配慮から設けられているものです。

有期雇用契約で押さえるべき3つの法律ルール(改正労働契約法)

有期雇用契約を運用する上で、企業が必ず理解しておかなければならないのが、2013年4月に施行された改正労働契約法で定められた3つの重要なルールです。
これらのルールは、有期雇用契約で働く労働者の雇用の安定と、待遇の改善を目的として導入されました。
具体的には、「無期転換ルール」「雇止め法理の法定化」「不合理な労働条件の禁止(同一労働同一賃金)」が該当します。

厚生労働省も周知を徹底しており、これらの法改正の内容を正しく把握し、遵守することは企業の責務です。

ルール1:通算5年を超えると無期雇用に転換できる(無期転換ルール)

無期転換ルールとは、同一の企業との間で有期労働契約が繰り返し更新され、その通算契約期間が5年を超えた場合に適用される制度です。
この条件を満たした労働者が申し込みを行うと、企業はその申し込みを承諾したものとみなされ、現在の有期労働契約が終了する翌日から、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。

企業は労働者からのこの申し込みを拒否することはできません。
そのため、企業側は対象となる従業員の通算契約期間を正確に把握し、無期転換の意向を確認するなど、計画的な人事管理が不可欠となります。

ルール2:不合理な「雇止め」は無効になる(雇止め法理)

雇止め法理とは、特定の条件下において、企業が契約期間の満了を理由に契約更新を拒否する雇止めを無効とするルールです。
これは過去の判例で確立されてきた考え方が、労働契約法に明記されたものです。
具体的には、過去に契約が何度も更新され、実質的に無期契約と変わらない状態である場合や、労働者が契約更新を期待することに合理的な理由がある場合が該当します。

このような状況で、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない雇い止めは、法律上無効と判断され、これまでと同じ条件で契約が更新されることになります。

ルール3:正社員との不合理な待遇差は禁止される(同一労働同一賃金)

同一労働同一賃金の原則は、有期雇用労働者と無期雇用労働者(正社員)との間で、基本給や賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練など、あらゆる待遇について不合理な格差を設けることを禁止するルールです。
業務の内容、責任の程度、配置の変更の範囲などが同じであれば、原則として同一の待遇を確保しなければなりません。

もし待遇に違いを設ける場合には、企業はその違いが職務内容や役割の違いなどに応じた、客観的・合理的なものであることを説明する責任を負います。
有給休暇の付与日数や昇給の機会なども対象となります。

企業が有期雇用契約を結ぶときの4つの重要ポイント

企業が有期雇用契約を活用する際には、そのメリットを享受する一方で、法律上の義務や注意点を遵守し、労使間のトラブルを未然に防ぐことが重要です。
特に、契約締結時の手続きや契約内容の明確化は、後の紛争を避けるための第一歩となります。
ここでは、雇用契約書の作成から、更新基準の明示、雇止め時の手続き、社会保険の加入義務まで、企業が有期雇用契約を結ぶ際に必ず押さえておくべき4つの重要な実務ポイントを解説します。

これらのポイントを確実に実行することで、健全な労使関係の構築につながります。

ポイント1:労働条件を雇用契約書で明示する義務

労働契約を締結する際、企業は労働者に対して賃金や労働時間といった主要な労働条件を明示する義務があります。
これは有期雇用契約においても同様で、書面(労働条件通知書)の交付が必須です。
特に有期雇用契約の場合は、必ず明示しなければならない記載事項として、「契約期間」や「契約更新の有無」、そして更新する場合があるときの「更新の判断基準」が定められています。

これらの事項を雇用契約書や労働条件通知書に具体的に記載し、労働者の誤解を招かないようにすることが重要です。
就業規則の内容と齟齬がないかも確認しなければなりません。

ポイント2:契約を更新する場合の基準をはっきりさせる

有期雇用契約におけるトラブルで特に多いのが、契約更新に関するものです。
これを防ぐためには、契約を更新する場合の基準をあらかじめ明確にしておくことが極めて重要です。
「会社の業績による」「本人の勤務成績を考慮する」といった抽象的な表現だけでなく、可能な限り具体的な判断基準を雇用契約書や就業規則で定めておくべきです。

また、反復更新を繰り返すことで労働者の期待感を高めないよう、更新回数や通算契約期間に上限を設けることも有効な対策の一つです。
契約延長の有無に関する基準を明確にすることで、雇止め時の紛争リスクを低減できます。

ポイント3:「雇止め」をする場合は30日前の予告が必要

有期雇用契約であっても、一定の条件を満たす労働者に対して契約を更新しない「雇止め」を行う場合、企業には事前の予告義務が課せられています。
具体的には、①3回以上契約が更新されている場合、または②1年を超えて継続して勤務している労働者との契約を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までに、その旨を通知しなければなりません。

これは、突然の雇止めによって労働者が不利益を被ることを防ぐための措置であり、無期雇用における解雇予告制度に準じたルールです。

ポイント4:一定の条件を満たせば社会保険への加入が必須

有期雇用契約の労働者であっても、一定の条件を満たす場合は社会保険(健康保険・厚生年金保険)および雇用保険への加入が法律で義務付けられています。
一般的には、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で働く正社員の4分の3以上である場合に加入対象となります。

さらに、従業員数101人以上の企業などでは、この基準を満たさない短時間労働者でも、週の所定労働時間が20時間以上であることなどの要件を満たせば、社会保険の適用対象となります。
企業は加入義務のある労働者を適切に保険に加入させる責任があります。

【2024年4月改正】労働条件の明示事項に追加された項目

2024年4月1日の労働基準法施行規則改正により、有期雇用契約を締結および更新する際の労働条件明示のルールが変更されました。
この改正によって、企業が労働者に明示しなければならない事項が追加されています。
具体的には、すべての有期契約労働者に対して「更新上限の有無と内容」の明示が義務化されました。
さらに、無期転換ルールが発生する契約更新のタイミングでは、「無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)」と「無期転換後の労働条件」を明示することが必要です。

企業は、この法改正に対応するため、労働条件通知書のひな形を見直し、適切な情報提供ができる体制を整える必要があります。

有期雇用契約はやむを得ない事由があれば契約期間中の解雇も可能

有期雇用契約は、定められた契約期間中は雇用が継続されることを前提としています。
そのため、労働契約法第17条第1項では、企業が契約期間の途中で労働者を解雇することは、「やむを得ない事由」がある場合でなければできないと定めています。

この「やむを得ない事由」は、無期雇用契約における通常の解雇理由よりもさらに厳格に解釈され、よほど重大な理由がなければ認められません。
例えば、労働者が著しい能力不足で改善の見込みがない、重大な規律違反を犯した、あるいは会社の倒産など、契約の継続を期待できないほどの客観的な事情が必要です。
期間途中での契約解除は非常にハードルが高いと認識しておくべきです。

有期雇用契約のまとめ

有期雇用契約は、契約期間の定めがあるという点で、企業にとって柔軟な人員調整を可能にする雇用形態です。
しかし、無期転換ルールや雇止め法理、同一労働同一賃金の原則といった厳格な法的規制の対象となります。
契約期間の管理や更新回数の上限設定、労働条件の明確な提示など、適切な労務管理を怠ると、予期せぬトラブルに発展する可能性があります。

特に2024年4月の法改正では明示事項が追加されており、常に最新の法令を把握することが不可欠です。
派遣社員とは異なる直接雇用の形態であるため、企業は使用者としての責任を十分に理解し、法律を遵守した上で制度を運用しなければなりません。

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