
就業規則とは。
賃金や労働時間、休日などの労働条件や、職場内の規則をまとめたルールブック。
企業にとってかなり大事なものですが、作り方を知っているという方は少ないかもしれません。
また作り方をはじめ、就業規則には様々な疑問があるかと存じます。
「就業規則の作成は義務付けられているもの?」
「うちの会社はまだ小さいから必要ない?」など。
就業規則は労働基準法第89条により、常時10人以上の従業員を雇用する企業には作成義務が発生いたします。
違反をしてしまった場合、30万円以下の罰金が科される場合がございますので十分に注意しましょう。
また雇用している従業員が10人未満の場合でも、現状の社内管理を円滑にするためにも、
今後のためにも、知識として作り方を覚えておくことを推奨いたします。
本記事では就業規則の基礎的な作り方の流れ、作成時の注意点やポイントをご紹介。
ぜひ参考にして就業規則の作り方をマスターしてください。
目次
就業規則の作り方 ~準備・作成から完成後のフロー~
早速、就業規則の作り方、準備から作成までの基本的な流れについて解説していきます。
こちらをチェックリストにして、一つ一つ進められているか慎重に確認しながら、計画的に進めていきましょう。
現状の労働条件を確認
就業規則の作り方、1つ目のステップは自社の現状の労働条件確認です。
自社の現状の労働条件としてあげられるもの全ての洗い出しをしていきましょう。
労働時間から定められている休日、給与やその他制度と呼べる全ての労働条件を確認します。
具体的には下記のような内容を指します。
・労働契約の期間
・就業場所
・始業時間から終業時間
・残業の有無
・休日休暇
・給与
他にも会社独自で使用している労働方法や取り決めなどがあれば、一度全部書き出してみましょう。
内容決定・作り方を確認し原案作成
就業規則の作り方、2つ目のステップは就業規則の内容決定と原案作成です。
1ステップ目で洗い出した労働条件を確認しつつ、原案を作成していきます。
作成方法がわからないという方は、同業他社の就業規則も参考にしつつ、厚生労働省が出している就業規則のテンプレートを確認し、様々な資料と比較しながら、自社の内情を加味した条件・規則を作成していきましょう。
下記リンクよりご確認ください。
厚生労働省 就業規則テンプレート
→モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課
就業規則を従業員へ周知する
就業規則の作り方、3つ目のステップは従業員への周知です。
就業規則の周知は、労働基準法の第106条によって義務付けられており、作成した就業規則は必ず従業員に開示する必要がございます。また新規の作成時だけでなく、就業規則を修正、追記した際も周知しなければなりません。
従業員に就業規則を周知していなかった場合は、就業規則の規定が無効になる可能性があります。必ず周知しましょう。
下記で従業員への周知方法を紹介しますので参考にしてください。
1.会社の誰でも見やすい場所に常時掲示する
従業員への周知方法1つ目は、社内に就業規則を掲示する方法です。
この方法が1番簡単かと思います。社内の誰でも見える場所であれば、ワークスペースでも、会議室でもフリースぺースでもどこでも問題ありません。
ただし、就業規則を作成したその時だけではなく、修正や追記点がある場合も新たな就業規則を掲示する必要があります。
常に最新の情報が社員に明確に伝わる状況を作りましょう。
2.書類を印刷して従業員へ配布する
従業員への周知方法2つ目は、就業規則の書類を印刷して従業員へ配布する方法です。
タイミングとしては入社時、部署に配属された時に配布するのが最適と言えます。
ただし、書面で従業員に配布する場合、注意点がございます。修正などで再び印刷する場合のコストや工数に加え、
配布し忘れてしまうといったリスクもあるため、あまりオススメできる方法とは言えません。
3.PCの共有ファイルに保存し、いつでも誰でも閲覧できるようにする
従業員への周知方法3つ目は、就業規則をPCの共有ファイルに保存して、いつでも誰でも閲覧できるようにする方法です。
社内のネットワークで誰でも確認できる状態にしておくことで、周知が出来ているとみなされます。
ただこの周知方法にも注意点があり、共有フォルダにパスワード等の閲覧制限がかかっている場合、
誰でも確認できる状態ではないため、従業員への周知が認められません。
上記3つが従業員への周知方法になります。逆にこのいずれにも該当しない方法ですと、就業規則を周知しているとはみなされません。
例として、就業規則の内容を口頭のみで説明したり、役員や管理職といった一定数しか閲覧できないような状態である場合、就業規則そのものが無効になる可能性があります。十分ご注意ください。
過半数労働組合または従業員代表の意見聴取をする
就業規則の作り方、4つ目のステップは過半数労働組合または従業員代表の意見を聴取することです。
労働基準法第90条1項により、就業規則の作成や内容を変更する場合、労働者の過半数で組織された労働組合の意見を聴取することが義務付けられています。
過半数労働組合が存在しない場合には、労働者の過半数を代表する者の意見を聴きます。
もし過半数労働組合や従業員の代表がこれまで作成した就業規則に否定的であってもこの効力に影響はないですが、これから長く働く仲間として、意見に耳を傾け、内容を取り入れるのは非常に重要な事です。
個別での面談や社内アンケート等を実施し、現在働く従業員と会社との間で労働条件の認識に相違はないか、
また加えたい労働条件はあるかの確認をしましょう。
企業の今後にとって、より働きやすい環境にしていくための非常に大事なステップです。
労働基準監督署への届出を行う
就業規則の作り方、5つ目のステップは労働基準監督署への届出をすることです。
就業規則の作成が完了したらいよいよ届出をしていきます。
下記の流れに沿って届出を完了させましょう。
1.必要書類を準備する
届出には下記書類の添付が必要になります。
・就業規則本文
・付属規程(存在する場合)
・意見書
就業規則の内容変更の場合は、新旧対照表も必要になってきます。
2.就業規則を届け出る
就業規則の新規作成後は迅速な届出が必要です。
変更の場合も施行日までの届出が必要になりますので、どちらもなるべく早めに届け出ましょう。
3.就業規則届出後に必要な対応を確認する
労働基準監督署へ就業規則を提出したらもうやること終わり、ではありません。
その後も労働基準監督署から法令違反やその他何かしらの指摘があった場合、修正の必要があります。
修正対応後、再度労働基準監督署に届出をしましょう。
以上が就業規則作成の基本的な流れになります。
ここまで解説してきた各ステップでの丁寧な対応を心がけ、法令を遵守し、
自社の内情を加味した就業規則を作成していきましょう。
ただ労働関係に限らずですが、法令は非常に複雑で分かりにくいものが多いです。
専門家である社労士や弁護士と相談して進めるか、あるいは作成を依頼する事も検討しましょう。
就業規則の作り方 ~記載する事項~
就業規則の作り方における注意点、記載する事項について解説。
就業規則に記載する事項は、大きく分けて3種類ございます。
1つ目は、作成にあたって必ず記載しなければならない事項「絶対的必要記載事項」、
2つ目は、場合によって記載の必要が発生する事項「相対的必要記載事項」、
3つ目は、会社が自由に定め記載する事項「任意的記載事項」がございます。
それぞれ内容を解説していきますので記載漏れが無いようにチェックしていきましょう。
記載が必須な「絶対的必要記載事項」
まずは、就業規則に必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項をご紹介。
その項目は大きく分けて下記3点になります。
・労働時間に関する内容
・賃金に関する内容
・退職に関する内容 (解雇事由も含む)
「労働時間に関する内容」とは、始業から終業時刻、休憩時間や休日、休暇、交替制の場合の就業時転換に関する事を指します。
「賃金に関する内容」とは、賃金の決定要素や賃金体系、計算及び支払方法、賃金の締切り及び支払い時期、そして昇給に関する事を指します。
「退職に関する内容」とは、退職事由からその手続き方法、解雇の事由等、退職に関するすべての内容の事を指します。
上記の内容が、就業規則への記載が必須な絶対的必要記載事項になります。
労働者が労働をするにあたっての安全性の確保に必要な事項、労働で得られる報酬等に関する事項が含まれています。
雇う側の会社と、雇われる側の労働者の間で最低限共通の認識を持たなければならない事項です。
互いの信頼関係に直結する事項になりますので、ご確認のうえ必ず記載しましょう。
定めをする場合に記載が必要な「相対的必要記載事項」
続いて、企業が何か新たに就業規則を定める場合、記載する必要がある相対的必要記載事項についてご紹介いたします。
規則は定めようとすればいくらでも定められますが、その中でも多くの就業規則で記載されている項目は下記のとおりです。
・退職手当について
→適用される労働者の範囲、計算要素や計算方法、一時金・年金かの支給方法とその支給時期
・退職手当を除く一時金、臨時の手当について
・最低賃金額
・食費、作業衣、作業用品等の負担
・安全及び衛生に関する事項
・職業訓練
→訓練の種類、時期、対象者、訓練中の処遇
・業務上及び通勤途上の災害補償、業務外の傷病に関すること
・表彰
→表彰の種類、事由、手続き
・制裁
→制裁(懲戒)の種類、事由、手続き
・休職、配置転換、出向、出張旅費など
相対的必要記載事項は、絶対的必要記載事項とは違い、必ずしも記載の必要があるものではありません。
ただこれらの事項も、会社と労働者間で共通認識として持つべきものである場合は、就業規則に記載しておきましょう。
会社が自由に定めることが出来る「任意的記載事項」
最後に、会社独自の方針で定めることが出来る任意的記載事項についてご紹介。
法律上の就業規則内記載義務はありませんが、最近では多くの会社がこの任意的記載事項を活用し、より良い職場環境を作ろうとしています。
例としては以下のような事項がございます。
1.服務規律に関する内容
企業が従業員に対し定める、働く上でのマナー、ルールの事。
主に遅刻・早退・欠勤に関するルール、服装や身だしなみ、守秘義務や副業・兼業への制限など。
2.福利厚生に関する内容
定期イベントや社員旅行、寮や託児所、その他様々な補助やサービスなど。
3.人事に関する内容
人事異動の基準、手続きについて。昇進や昇格・降格の条件、評価の基準など。
4.教育に関する内容
研修制度や参加条件について。その他自己啓発・資格取得支援など。
5.情報管理・セキュリティに関する内容
社内IT機器(社用携帯やPC)、ネットワーク使用時におけるルール、個人情報の保護など。
6.ハラスメントに関する内容
セクハラやパワハラをはじめとした様々なハラスメントに関する定義と禁止事項。
その他社内ハラスメント相談窓口など。
任意的記載事項は会社の文化や理念をそのまま反映するような大事な内容です。
社会通念や公序良俗に反する内容にならないよう気を付け、会社と従業員の双方にとってより良い職場環境になる内容にしていきましょう。
就業規則の作り方 ~使用されている一例~
ここからは実際に使用されている就業規則の一例をご紹介いたします。
既に解説してきた就業規則の内容に加え、より細かい内容となっておりますので是非就業規則作成の参考にしていただければと思います。
1.選考時・採用決定時に提出を求める書類や内定取消の事由について
選考時・採用決定時に求める書類や内定取消になる事由について就業規則に記載例をご紹介。
それぞれの必要書類は下記のとおりです。
・選考時に提出を求める書類
(2)職務経歴書
(3)健康診断書(提出日前3か月以内に受診したものに限る。)
(4)各種資格証明書(写)、運転免許証(写)、学業成績証明書及び卒業見込証明書、その他会社が必要と認める書類
(5)在留カードの写し(在留資格を有する外国人に限る。)
(6)その他会社が必要とするもの
2 会社は、採用内定者に対し、書面で通知するものとする。
3 契約社員等については、会社の裁量により、本条による採用選考の手続き(前項を除く。)の一部を省略し、簡素な手続によることができる。
・内定取消事由
(2)入社日までに健康状態が採用内定時より低下し、職務に堪えられないと会社が判断したとき。
(3)暴力団員や暴力団関係者と関わりがあることが判明したとき。
(4)採用選考時の提出書類に偽りの記載をし、又は面接時において事実と異なる経歴等を告知していたことが判明し、会社との信頼関係を維持することが困難になったとき。
(5)採用内定後に犯罪、反社会的行為その他社会的な信用を失墜する行為を行ったとき。
(6)第8条第2項に定める採用内定時には予想できなかった会社の経営環境の悪化、事業運営の見直し等が行われたとき。
(7)その他前各号に準ずる又はやむを得ない事由があるとき。
・採用決定時に提出を求める書類
(2)秘密保持誓約書(会社所定の様式)
(3)身元保証書(会社所定の様式、保証人による催告及び検索の抗弁権放棄の記載を要する)
(4)住民票記載事項証明書
(5)給与所得の扶養控除等(異動)申告書
(6)源泉徴収票(入社の年に給与所得のあった者に限る。)
(7)年金手帳(20歳以上の者)
(8)雇用保険被保険者証(前職のある者)
(9)個人番号カード又は通知カードの写し
(10)その他会社が必要とする書類
2 前項各号に掲げるいずれかの書類の提出を拒んだ者は、採用を取り消す。
3 第1項各号の提出書類の記載事項に変更が生じたときは、速やかに書面で会社にこれを届け出なければならない。
2.休暇について
続いて絶対的必要記載事項でもある休暇についての就業規則をご紹介。
産休や育休、その他介護休暇があるのはもちろんのことですが、加えて使用されている内容は下記のとおりです。
・特別休暇
(1)本人の結婚 連続する5日間(入籍日または結婚式の日から6か月以内の取得に限る。なお、在籍中1回限りとする。)
(2)妻の出産 1日(内縁の妻は除く)
(3)子の結婚 1日
(4)父母(配偶者の父母を除く)、配偶者、子の死亡 会社が必要と認める日数
(5)バースデー休暇 1日
(本人、配偶者、実父母、実子に限り、その対象者の誕生日の属する月内の取得に限る。なお、毎年1/1を期首として、1年のうち1回限りとする。)
(6)その他、会社が必要と認める場合 会社が必要と認める日数
2 特別休暇の取得は、連続して取得するものとする。なお、特別休暇の取得が会社の休日と重なった場合は、その日を含めて通算するものとする。
3 特別休暇取得日は有給とする。また、特別休暇の取得にあたり、その前後の日について年次有給休暇を取得することは妨げない。
4 他の事由による休暇中又は休業中にある者は、特別休暇を取得することはできない。
5 会社は、必要に応じて、慶弔等を証明できる書類の提出を求めることがある。
これを拒んだ場合には、特別休暇の取得は認められず、欠勤の扱いとする。
6 契約社員等は、原則として、本条の規定は適用しない。
・ボランティア休暇
2 対象となるボランティア活動は、次の各号に掲げるものとする。ただし、原則として日本国内において活動するものに限る。
(1)地域貢献活動
(2)社会福祉活動
(3)自然・環境保護活動
(4)災害地域復興支援活動
(5)スポーツ大会
3 ボランティア休暇の日数は、1年間につき3日(分割取得、連続取得どちらもできます)を限度とする。
なお、この場合の1年間とは、4月1日から翌年の3月31日までとする。なお、ボランティア休暇の日数は、次年度への繰越しはできないものとする。
4 ボランティア休暇日は無給とする。ただし、年次有給休暇を利用することを妨げない。年次有給休暇を利用した日に関しては、所定労働日に出勤したものとして取り扱う。
5 会社はボランティア休暇を取得する社員に対し、ボランティア活動に参加するための費用を補助する。ただし、1回のボランティア休暇に対する交通費等の補助は上限3,000円までの実額費用を最大3回までとする。
6 ボランティア休暇を取得する際には、事前に所定の様式により会社に申請し、その許可を得なければならない。
7 ボランティア活動を取得した後には、ボランティアの活動状況及び交通費等の精算をするために報告書を提出しなければならない。
8 契約社員等は、原則として、本条の規定は適用しない。
・裁判員休暇
(1)裁判員又は補充裁判員として裁判に参加する場合…必要な日数
(2)裁判員候補者として裁判所に出頭する場合…必要な時間
2 裁判員休暇を取得した日については、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。ただし、旅費及び宿泊費は支給しない。
3 裁判員休暇を取得する従業員は、裁判所から第1項に関する通知を受け取ったとき、及び裁判に参加又は裁判所に出頭したときは、出社後速やかに会社に報告しなければならない。
上記就業規則の一例はほんの一部のものとなります。
様々な就業規則例や作り方を参考にしながら、会社に沿った内容を作成していきましょう。
就業規則の作り方 ~まとめ~
いかがでしたでしょうか。
本記事では就業規則の作り方や記載する事項について紹介いたしました。
ここまで解説した就業規則の作り方は、簡単とは言えません。工数がかかりめんどくさいと感じるかもしれません。
加えて就業規則は自身が雇われている労働者側ですと、最初に目にした程度のもののため、必要性がいまいちピンとこないと感じた方もいるのではないでしょうか。
ただ会社と労働者双方にとってはもちろん、会社の在り方であったり、会社の未来にとって非常に大事なものです。
就業規則が適切に整備されていると、労務トラブルを未然に防ぐことが出来るうえ、労務管理の効率化、会社のニーズに合った人材の獲得・定着にも繋がります。
ぜひ本記事就業規則の作り方を参考にしながら、会社と労働者にとって最適な就業規則の作成を目指してください。
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